四月の永い夢
第20回台北映画祭Asia Prism部門
第10回バンガロール国際映画祭Asian Cinema Competition部門
第12回さぬき映画祭
第35回あきる野市映画祭・斎藤耕一賞
3年前に恋人を亡くした27歳の滝本初海。音楽教師を辞めたままの穏やかな日常は、亡くなった彼からの手紙をきっかけに動き出す。
元教え子との遭遇、染物工場で働く青年からの思いがけない告白。そして心の奥の小さな秘密。
――喪失感から緩やかに解放されていく初海の日々が紡がれる。
初海の心の光と影をその透明感あるたたずまいでみずみずしく演じるのは『かぐや姫の物語』の朝倉あき。初海に恋する朴訥で誠実な青年・志熊を体現するのは映画・TVで活躍する三浦貴大。脇を固める高橋由美子 志賀廣太郎 高橋惠子ら実力派俳優陣の心打つ演技、舞台でも活躍する川崎ゆり子。モデルで活躍する青柳文子の新鮮な存在感。
大橋トリオ等と活動するユニット・赤い靴の「書を持ち僕は旅に出る」が挿入歌として印象的に流れ初海の一歩をそっと後押しする。物語を彩るのは『おおかみこどもの雨と雪』の舞台となったともされる国立や富山県朝日町をロケ地とした日本の美しい風景。平成という時代が過ぎ去ろうとする今、本作は物質的豊かさをゴールとしない丁寧で誠実な日常が生みだす幸せと希望をどこか昭和的なノスタルジーと共に伝えてくれる。
「前作の『走れ、絶望に追いつかれない速さで』(16)は、ベクトルが自分に向いている、ある意味プライベートな映画でした。亡くなった親友へのレクイエムであり、自分にとってのメモワール。年齢を重ねて観たときに、当時の自分の気分を思い出させてくれるものを作りたかったんです」。
『走れ、絶望に追いつかれない速さで』は、親友の自死をどのように受け止めていくかについて実体験をもとに描き、主人公の痛切な感情が観る者に熱く迫る作品だ。大学生から社会人になろうとする時に亡くなった親友の、その死の翌年に撮った映画であり、映画のタイトルも、学生時代に中川監督が落ち込んでいた時に、その親友が英語でメールしてきてくれた言葉からとったもの。
対して、本作『四月の永い夢』は、いわばその親友の恋人の視点からの物語。亡くなって3年の時が流れている。かつて親友を亡くした時、「彼のような友人は果たして今後、作り得るのだろうかと思った」という中川監督。だが今となれば、彼が亡くなってから、あるいは亡くなったことによって育まれていった親しい人間関係が存在することを認める。「今回は、その人達との世界を描こうと思いました」。
製作:WIT STUDIO
配給:GAGA+
制作:Tokyo New Cinema
チーフプロデューサー:和田丈嗣
プロデューサー:藤村駿、石川俊一郎、木ノ内輝
アソシエイトプロデューサー:新井悠真
ラインプロデューサー:佐藤宏
共同脚本:吉野竜平
音楽:加藤久貴
主題歌:赤い靴
撮影:平野礼
照明:稲葉俊充
録音:伊豆田廉明
メイク・衣装:タカダヒカル
編集:丹羽真結子、エドモンド・ヨウ
助監督:佐近圭太郎、角屋拓海
監督・脚本:中川龍太郎
朝倉あき/三浦貴大/川崎ゆり子/高橋由美子/青柳文子/東龍之介/福島珠理/森次晃嗣/志賀廣太郎/高橋惠子